家庭園芸用農薬

正しい使い方をすれば安全とはいわれていても、狭い場所で多品種を育てる家庭園芸では極力農薬を使わないようにしたい。風通しや肥料の適切な与え方など管理面で注意するほか、害虫なら見つけ次第捕殺したりして被害を最小限に抑えるようにする。
やむを得ず使用する場合でも、家庭園芸用の専用農薬はないが、毒物、劇物にあたらない園芸店でだれでも購入できる「普通物」というものを使うのが一般的と思われる。
医薬用外劇物
果樹やなどに利用されていた石灰硫黄合剤は、本来の病害虫防除以外の目的で使用される事例があるため、小型規格(500mL、1L)の生産はH22年春で生産中止になった。
1.殺虫殺菌剤
害虫と病気の両方に効く薬剤。一般的には殺虫成分と殺菌成分をはじめから混合した薬剤を言う。オルトランCやベニカDXなど。
2.殺虫剤
昆虫、ダニ、センチュウなどの害虫を退治したり、予防する薬剤。
○接触剤
殺虫剤の多くは接触剤に属する。直接害虫にかからなければ効果のあらわれない薬剤ではあるが、多くは散布された場所に害虫が触れても効果があらわれる(マラソン乳剤、スミチオン乳剤、劇物のディプテレックス乳剤など多数)。 この種の製品はかけむらのないようにていねいに散布することが必要になる。スミチオン・マラソン・DDVP・EPN ・カルホス・デナポン・ディプテレックス・ランネートなど。(スミチオン乳剤はアブラナ科作物には薬害を生ずるおそれがある)
○食毒剤
散布された葉などを食べることによって害虫が退治される薬剤(ゼンターリ顆粒水和剤)。食害は直ちに止まるため被害防止に役立つ。
○浸透移行性剤
普通の薬剤は植物に吸収されても植物体内を移動しないが、根や葉から吸収されて移動する薬剤を浸透移行性剤(オルトラン水和剤、ベストガード粒剤、モスピラン粒剤など)といい、食毒剤としてその植物を加害した害虫を退治する。
長期間効果が持続するため便利な薬剤で、特に、オルトラン類は食害性害虫と吸汁性害虫の両方に効果がありますので、家庭園芸向き。
オルトラン、エストックス、ジメトエート、ダイジストン、 アクテリック、ベストガード、モスピランなど)
○誘殺剤
食毒剤の一種だが、害虫が好む餌の中に薬剤を混ぜ、おびきよせて退治する薬剤で、夜間活動するナメクジやネキリムシ、ヨトウムシなど、直接見つけて退治するのが難しい害虫を退治する。ナメトックスやデナポン5%ベイトなど。
○種子処理用殺虫殺菌剤
種子が発芽して成長する初期の段階で病気や害虫の被害にあわないようにするための薬剤。
3.殺菌剤
カビや細菌などの病原菌を退治・予防する薬剤。ウイルスの予防薬も含まれる。
○予防殺菌剤
多くの殺菌剤が該当し、薬剤を散布することにより、葉の表面に付着している、または飛んできた病原菌を退治し、予防効果に優れている。植物体内に入った病原菌に効果はないが、病原菌が繁殖するために葉面に出てきたときに接触して効果を発揮する。ダコニール1000、オーソサイド水和剤、ビスダイセン水和剤など。
○治療殺菌剤
病気のために変色した部分を元通りにするという意味ではなく、薬の成分が葉の中に浸透し既に侵入した病原菌まで退治する。(ベンレート水和剤、トップジンMゾル、サプロール乳剤など)
4.植物成長調整剤
植物の開花、着果、発根、成熟などの特定の生理機能を調節する薬剤。ブドウの種抜きのジベレリンなど。
これら以外にも、農薬と肥料の作用がある農薬肥料(カリグリーン=うどんこ病の薬、テマナックス=芝生の除草剤など)、展着剤(ダインなど)やフェロモン剤などがある。
5.除草剤
雑草を枯らしたり、雑草の種子の発芽を抑制する薬剤。
○土壌処理系
家の回り、空き地などの非農耕地で総ての雑草を枯らすもので、多くは作用性の異なる成分を数種類混合してある。成分は一旦土壌に移行して雑草の根から吸収され、同時に土壌に処理層を形成するので、長期間雑草の発生を抑えることができる。ネコソギエースX粒剤など。
○茎葉処理系除草剤
成分は植物の葉や茎から吸収され、必須アミノ酸合成酵素を阻害して全体を枯らす。成分は土壌に落ちるとすばやく不活性化するのでこれから植物を植える予定がある場所の除草でも使用できるが、雑草の発生を抑える効果はない。植物の一部についただけで全身に移行して根まで枯らすが、枯れるまでに10~15日ほどかかる。ラウンドアップなど。
○日本芝用
日本芝はイネ科の植物で、広葉植物とは生理機能に異なる点があり、この差を利用して芝生の中に生えている広葉の雑草のみを退治する薬剤(MCPソーダ塩、ザイトロン微粒剤など)と雑草の種子の発芽を抑える薬剤(テマナックスなど)がある。 ただし、前者は芝生と同じ仲間のイネ科の雑草に、後者は既に生えている雑草に効果はない。

製剤方法による分類
○乳剤
水に溶けにくい有効成分を有機溶媒に溶かし、さらに水に馴染み易くするために界面活性剤を加えたもの。使用時に水で希釈するとエマルションになる。

○水和剤

水に溶けにくい有効成分を、鉱物等に混ぜて微粉状にし、水に馴染み易くしたもの。水で希釈して使う。飛び散らないよう、粒状に成形したものは顆粒水和剤、またはドライフロアブルと呼ばれる(うち、水田用除草剤は顆粒とも呼ばれる)。

○水溶剤

水溶性の有効成分を水に溶かし希釈して使う。

○液剤

有効成分の水溶液。そのまま使うものと水で希釈して使うものがある。

○粒剤

有効成分に鉱物粉等に混ぜて粒状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径によって微粒剤、細粒剤などがある。

○粉剤

有効成分に鉱物粉等に混ぜて粉状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径とその割合によって微粉剤、DL粉剤、フローダスト剤などがある。
医薬用外劇物
果樹やなどに利用されていた石灰硫黄合剤は、本来の病害虫防除以外の目的で使用される事例があるため、小型規格(500mL、1L)の生産はH22年春で生産中止になった。