植物を育てていると、いつの間にか葉が枯れたり食べられていたりしていて、健全に育つことができなくなる場合がります。害虫は目で見つけて駆除できる場合もありますが、病気は発見した時には手遅れになっていることが多いです。
色々な農薬が販売されていますが、できるだけ農薬を使わない次のようなような工夫をしています。
「言うは易く行うは難し」ですね。
・日当たりや風通し、栽培時期、土壌酸度など、それぞれの植物の生育に適した環境で健全に育て、植物の自衛能力を向上させる。
・過剰な肥料や未熟な堆肥を与えない。軟弱になったり、害虫を呼び寄せることになる。
・微生物が豊富に住む団粒構造の土を作り、根などが健全に育つ環境を作る。有機肥料の効き目がよく現れるようになる。
・害虫を発見した時は、すぐに捕殺したり、被害部を取り除いて被害が拡大するのを防ぐ。
・防虫ネットや袋かけ、害虫の嫌がる光反射シート、有色粘着シートなどを組み合わせて害虫を近づけない。
・アブラムシに対するテントウムシのように、天敵をうまく活用する。
・やむを得ず農薬を使用するときには、早めに散布する。被害が大きくならないし、害虫も寄ってきにくくなる。
病気
病気の原因となる病原菌の種類
(1)カビ(糸状菌)
被害症状は、葉枯れ、斑点、斑紋などの変色、肥大、こぶ、萎縮などの変形、腐敗などその種類によって様々で、病名も種類が多く、灰色かび病、うどんこ病、黒星病、立枯病、菌核病、白絹病など。園芸で問題になる病気の大多数はこのカビが原因で、病原菌の判断がつきにくい場合はカビが原因と考えて一時対応する。
(2)バクテリア(細菌)
被害症状は、斑点、こぶ、立枯れ、腐敗などがあり、初期のうちは上記のカビの病気と簡単に区別できないこともある。病名は軟腐病、根頭がんしゅ病、斑点細菌病、青枯病など。
(3)ウイルス(バイラス)
被害症状は葉色が濃淡のモザイク状や斑点、さらに株全体が萎縮したり枯れたりする。ウイルス病、モザイク病などと呼ばれ、一度病気になると直すのは難しい。
(4)微生物
マイコプラズマ様微生物などによって起きる病気で、萎黄病などがある。種類は少ない。
病原菌以外で病気のような症状が出る場合
(1)害虫が原因
害虫の被害で葉の一部が変色して病気の症状に見える場合で、代表的なものではキクのハガレセンチュウ、ぶどうのハモグリダニ、竹のハダニなど。
(2)土壌の状態や肥料の過不足が原因
土壌酸度が適さない、肥料成分の過不足などによって病気の症状に見える場合で、カルシウム欠乏によるトマトの尻腐れ症、レタスの縁腐れ症や心腐れ症、マグネシウム欠乏によるメロンの葉枯れ症、キュウリの白変葉など過不足のある養分の種類によって様々な症状があらわれる。
(3)化学的要因が原因
オゾン、二酸化硫黄、二酸化窒素など大気汚染物質によって植物の組織が破壊され、斑点などが病気の症状に見える。除草剤がかかったり、殺虫剤を高濃度で散布しても起きる。
(4)気象的要因が原因
日焼け、冷害、風害、雪害など気象が原因で葉枯れなど病気の症状に見える。
主な病気の種類と対策
○青枯れ病
・株が急に萎れて枯れる。回復は難しいので早期に抜いて処分する。
・ナス、トマトなどのナス科の植物に、気温が高く、湿気の多い夏に発生する。
・排水を良くし、連作を避ける。
○うどんこ病
・葉や枝などが小麦粉をまぶしたように真っ白になり、広がると成長が阻害される。
・野菜、庭木、草花などあらゆる植物に、春から秋にかけて、多く発生する。
・高温多湿、日照不足、通風不良などの環境条件で発生しやすく、発生前や初期にベンレート、ダイセンなどを散布する。
○疫病
・褐色の斑点が発生し、そこに白いカビが生えて腐ったようになって枯れる。回復は難しいので空気伝染しないよう早期に抜いて処分
・ナス科、柑橘類、イチジク、草花など広い植物に、5月から梅雨時にかけて発生、真夏には少し衰えて秋に再び発生する。
・高温多湿、日照不足、通風不良などの環境条件で発生しやすく、発生前や初期にベンレート、ダイセンなどを散布する。
○枝枯病
・枝の表面の艶がなくなり、褐色の斑点が発生、その病斑が枝全体に広がっていって全体が褐色になり、その枝葉が枯死する。
・バラやウメ等で、風通しと日当たりが悪いと発生しやすい。
・冬の剪定時に、枯れた枝、混み合った部分の枝を剪定する。発病した枝は見つけしだい切り取り、処分する。
○黒星病
・病斑は輪郭がややギザギザの黒褐色円形で、病斑のある葉は順次落葉する。病原菌は被害部位について越冬する。
・バラの成葉などに発生しやすく、病原菌は被害茎や落葉した病斑上で越冬し、翌春、雨滴のはね返りなどにより伝染する。そのため、、20~25℃程度の比較的高温で雨が続く時期(梅雨など)を中心に、5~10月まで年中発生する。
・高温多湿、日照不足、通風不良などの環境条件で発生しやすく、発生前や初期にサプロールなどの殺菌剤を散布する。
○根頭がんしゅ病
・土の中にいる病原細菌が根と幹(茎)の境目あたりに大小さまざまなコブを作って繁殖する。栄養の吸収が悪くなるため、生育が悪くなり、最悪の場合は枯れてしまう。
・バラなどの庭木や果樹の植付け時などに傷口から細菌が入って繁殖する。
・株元を良く観察して病気にかかっていない苗を購入し、植えつけ時などに根や茎に傷をつけないように注意する。作業に使用する用具などは、消毒用アルコールなどで消毒する。
・こぶを削り取ってもよいが、また再生してしまう。削りかすには多量の病原細菌が繁殖しているので、ほかに感染しないように注意して処分する。
○立枯病
・順調に育っていた株の下葉が黄化しはじめ、次第に元気がなくなり、やがて地上部が萎え、最終的には立ち枯れたり倒れて枯れてしまう。生育初期の苗の地ぎわ部分が細くくびれて、折れて倒伏して枯れる症状を苗立枯病という。
・糸状菌が原因で、多くの種類の草花、野菜に発生しやする、生育中にこの病気が発生した場合は薬剤による治療は不可能で、病株は抜き取って、ほかへの感染を防ぐために廃棄する。
・未熟な有機物で病原菌が繁殖するので、必ず完熟堆肥を使用する。また、多湿を好むので、通風、排水をよくしてやる。
○べと病
・葉に黄化した斑点が現れ、裏側にカビが発生する。植物の種類によって原因となる病原菌が異なり、発生する症状も異なる。ウリ科の植物では、葉の表面に葉脈で区切られた角のある黄色い病斑が現れ、裏にやや暗色のカビが発生する。 キャベツなどアブラナ科の植物では、薬に輪郭が不明瞭な黄色っぽい病斑ができ、裏側に白いカビが生える。バラでは若い葉に水がしみたような不規則な病班が発生、病葉の裏面には灰白色のうすいカビが生じて落葉しやすくなる。
・密集して植えたり、肥料を多くやり過ぎたりすると発生しやすい。
・間引きなどで通風をよくし、適切な肥培管理をする。発生の初期に、ダコ二-ル1000などの殺菌剤を1週間おきに2~3回散布する。
害虫
主な害虫
○アザミウマ(スリップス)
・体長2ミリほどの細長い昆虫で、成虫が、草花、野菜、庭木、果樹などの葉裏や葉のつけ根などにすみ、穴をあけて養分を吸う。葉には小さな斑点模様ができ、苗や株が弱ってくる。花弁内にもぐり込んで養分を吸すわれると正常に花が咲かなくなる。果実や球根を侵す種類もいる。アブラムシと同様にウイルス病を媒介する。ハダニと同様に乾燥・高温期に異常繁殖しやすく、被害状況もよく似ている。
・1年中発生を繰り返すが、ピークは梅雨明けから8月いっぱいの乾燥・高温期に異常繁殖し、雨の少ない異常天候の年はとくに注意が必要。
・早期にマラソンなどの殺虫剤で駆除する。葉には直接虫にかかるように、花には花弁を傷めないように蕾のうちに散布する。発生源になりやすい花殻をこまめに摘み取ることも大切。
*高橋さんち
ブドウの葉に発生して困っていた。発生初期は数が少ないので手でつぶしていたが数が多くなると手に負えないので、マラソン剤を散布していたが効果は長く続かない。
そこでGFオルトラン水和剤を散布した。効果は良好でその後発生が無くなった。
有効成分はアセフェートで、葉や茎から吸収されて植物体内にゆきわたる浸透移行性殺虫剤なので、薬剤散布後に発生したり飛来した害虫、葉を巻いている害虫、散布液がかかりにくい場所に生息している害虫にも効果があるとのこと。
散布は、1,500~」2,000倍に希釈し、収穫60日前までに1回のみ。
しかし、「登録維持に必要な資料整備に経費と時間を要するため」とのことで2018.9.26にブドウへの登録が削除された。
新しい対応策を考える必要あり。
○アブラムシ
・2~3mmの小さな虫で、室内の鉢植えものも含め、ほとんどすべての植物に発生し、若い葉や茎などに群がって口針を刺し、栄養分を横取りする。そのため、葉や新芽が縮れたり、生育が悪くなったり、ひどい場合は枯死する。更に、ウイルスを運んでモザイク病を発生させたり、アリが寄りつくなど、間接的な被害も発生させる。
・多くの種類がおり、普通は、4~6月と10月に多くが発生し、温室内では冬でも発生する。
・繁殖力が高く、油断しているとすぐに増えて手に負えなくなるため、早期に低毒性殺虫剤のアセフェート剤(オルトラン)、MEP剤(スミチオン)などを散布して駆除する必要がある。日の細かいネットをかけたり、反射光線を嫌う性質を利用して、株元に光を反射するアルミ箔などを敷いておくのも効果がある。*
高橋さんち
どこにでも発生するが、ウイルス媒介や成長不良の点で害が大きいのは、野菜ではトマト、セロリやパセリ、ハクサイ、花ではユリ(特にウイルス媒介)、オンシジューム、ハイビスカス、菊、バラなど。
ホームセンターでも販売しているマラソン乳剤が効果があり、有効成分はマラソンで、有機リン系。
散布は、2,000~3,000倍に希釈し、収穫前日~14日前、3~5回など作物によって異なる。
スミチオン乳剤やオルトラン水和剤は浸透性が高く効果が長持ちするが適用野菜等の範囲が案外狭い。
スミチオン乳剤の有効成分はMEP(フェニトロチオンという・有機硫黄系)で、害虫が薬剤に接触したり薬剤の付着した植物を食べることによって効果を発揮する。
散布は、1,000倍に希釈し、収穫前日~21日前、2~5回など作物によって異なる。
トマト:2000倍、収穫14日前まで、2回以内
アブラナ科には薬害があるので使用不可。
○アメリカシロヒトリ
・成虫は白いガで、主に市街地にある広葉樹の葉を幼虫(ケムシ)が食い荒らす。幼虫は最初、樹木の枝先の白い糸を張った巣におり、その後這い出してきて集団で周囲の葉を食い荒らし、最後は広がって全体の葉を食べ尽くす。それ以降は、地上に降りて周囲の雑草を食べたり、家の壁をはい回ったりする。成虫のガは、あちこちに飛散して、葉に卵を産みつける。
・5~6月頃に毛の多い幼虫が発生、8月頃成虫(ガ)になるのと、8~9月に幼虫が発生、サナギで越冬して5~6月に羽化して成虫になるので年2回発生する。
・樹木の先端が蜘蛛の巣の張ったように白くなったときはその巣の中に幼虫が1週間位は集団で生活しているので、枝を切り取って踏みつけたり、スミチオン乳剤などを散布して駆除する。全体に広がったり、羽が生えて飛び回るようになってからの駆除作業は困難。
○イラガ
・イラガ科のガの幼虫で、主に広葉樹のほとんどの樹木に発生する。幼虫が最初集団で葉の筋だけ残してスカスカにし、広がって周囲の葉を食い荒らす。この幼虫には毒針(毒毛)があり、直接触れるとビリッと感電したようになり、激しい痛みが来て腫れてきて治るのに1週間程度かかるので、絶対触れないようにする。
・春と秋の年2回発生するものと、春だけ発生するものがいて、姿も多少違うが、幼虫は緑色をしているものが多い。
・小さな幼虫が群生しているスカスカになった葉の付いた枝を切り取って踏みつけたり、スミチオン乳剤などを散布して駆除する。スプレータイプの殺虫剤も効果がある。冬期は丸く固いマユ(サナギ)の状態で枝などで越冬するので、見つけたら叩きつぶす。サナギには触れないようにする。
○カイガラムシ
・枝や葉にびっしりと付いて動かないように見える虫で、樹木から草花類まで、アプラムシと同様に多くの植物に発生し、枝、幹、葉などに寄生して植物の栄養分を吸い取る。そのため、生育が悪くなったり、ひどい場合は枯死する。種類によっては、排泄物を葉などに残し、二次的にすす病を引き起こすものもある。
・多くの種類がおり、5~7月にふ化し、その後移動を続けて越冬するもの、年間発生を繰り返すものなどさまざまな種類がいる。
・成虫は貝殻のような殻をかぶったり、ろう質物で覆われたりしているので、殺虫剤はふ化したばかりのタイミングで使用しないと効果がない。カルホス、オルトランなどが有効。気持ちのいいものではないが、大きなものは、見つけしだい、割り箸やビニール手袋でつぶす。コナカイガラムシを除いて、落とした虫が再び這い上がって来ることはないので棒や歯ブラシなどでこすり落としてもよい。 休眠期の冬に薬剤を散布する場合は、被覆性の高いマシン油乳剤などを使う。適当な枝すかしをして風通しをよくしておくと少し予防になる。
○カメムシ
・体長5~20㎜の昆虫で、幼虫や成虫が草木、果樹の茎や実などに寄り集まって植物の栄養分を吸い取る。そのため、生育が悪くなったり、ひどい場合は枯死する。マメ類につくものは、さやの汁液を吸って実入りを悪くし、果樹につくものは、果実を変形させたり、落果させたりする。触ると危険を感じて独特の悪臭を発生する。
・多くの種類がおり、春~初夏に草などに産卵し、7~8月に成虫となって被害を発生させ、そのまま越冬する。
・早期にスミチオンなどの殺虫剤を散布して駆除する。
○コガネムシ
・ハネに白色の小さな斑紋がある長い触角をもつ体長25~35mmの黒い昆虫で、幼虫が草の茎、庭木、イチジクなどの樹木の幹の中を食い荒らすため、そこから上の葉がしおれてきたり、枯れたりする。
○ゴマダラカミキリムシ
・ハネに白色の小さな斑紋がある長い触角をもつ体長25~35mmの黒い昆虫で、幼虫が草の茎、庭木、イチジクなどの樹木の幹の中を食い荒らすため、そこから上の葉がしおれてきたり、枯れたりする。
・成虫は6~7月頃に樹木の幹などに産卵し、幼虫はその中をかじりながら夏を越して、秋に成虫になり、そのまま越冬して、翌年また卵を産みつける。
・茎や幹にえぐられたような傷ができ、幼虫が木質部へ進むようになると木屑が出てくるので、早めに木くずを見つけて、その穴の中にスプレー式の殺虫剤を散布するか針金などで刺殺する。成虫は、発見しだい捕殺する。
○コナジラミ
・体長2~3mmの白いハエのような害虫で、群れて葉裏などに止まっており、触れると一斉に飛び出す。幼虫が草花、野菜、花木、庭木から果樹、温室内の洋ランなどの多くの植物の葉裏に寄生して汁を吸う。排泄物によって二次的にすす病も発生するので、成長が阻害される。
・多くの種類がおり、梅雨明けくらいから増えはじめ、9~10月くらいに最も多くなる。コナジラミは繁殖が早く、約1週間で卵が成虫になるため、温度があれば繰り返し発生し、暖かい温室やフレームでは1年中発生を繰り返す。幼虫の移動が少ないため、成虫は幼虫が養分を吸いやすいように柔らかい新葉の葉裏に産卵する。
・繁殖が早いため、アクテリック乳剤などの殺虫剤を散布して駆除する。卵は幾分残るので、継続的な散布が必要となる。黄色い色に刺激されて近寄る性質を利用して、黄色の粘着リボンをつり下げて捕殺する方法もある。
○シャクトリムシ
・シャクガの幼虫で、樹木やバラなどに付き、それらの枝とそっくりの姿で葉を食い荒らす。体を伸ばして静止した状態では、ほとんど枝と見分けがつきにくい。歩くときに〝反物の尺を取る(寸法をはかる)″ようにからだを上下にくねらせて進むので、この名がある。
・多くの種類がおり、体の大きさや色も異なる。5~6月と8~9月の年に2回発生するものが多い。
・数が少なければ、捕殺する。枝と見間違いやすいが、よく観察し、見つけ次第、スミチオンやスプレータイプの殺虫剤などを散布して駆除する。
○シンクイムシ
・主にメイガ科のガの幼虫で、植物の若い茎や果実に入り込んで食害する。生長点の中心部が食べられた場合は新芽が育たず、果実に入り込まれると、その作物はもう食用にはできない。トウモロコシシンクイムシ、ダイコンシンクイムシなど被害にあいやすい作物の名前も付いているが、 洋ランの中心を食べられたことがあり、被害範囲は広い。
・東北・北海道地方では6月と8月の年2回、関東地方以西では5月と7月と9月の年3回発生する。
・幼虫が茎や果実に食い込む前に、スミチオンなどの殺虫剤を散布する。中心部が蜘蛛の巣状になったら潜んでいることが多いので捕殺する。トウモロコシなど被害を受けた株は翌年の発生源になるので処分する。
○センチユウ(ネマトーダ)
・主に土中に生息する体長1mm以下の微生物で、体色も透明に近いため肉眼で見つけるのは不可能。大きな被害を与えるのは、植物の根に寄生して養水分を吸い上げるネコプセンチユウとネグサレセンチュウで、ほとんどすべての植物に被害が出る。
寄生された植物には生育が衰えたり、下葉から枯れ上がったり、開花率が低下するといった症状が現れ、株を抜いてみると、根に大小のコプがたくさんできていたり(ネコプセンチュウ)、根が腐って少なくなっていたり(ネグサレセンチユウ)している。
そのほか、マツを急速に枯らすマツノザイセンチュウ、イチゴの新芽や花芽について収穫量を低下させるイチゴメセンチユウ、球根を腐らせるイモグサレセンチユウやナミクキセンチュウ、キクなどの葉肉内に寄生して葉を枯らすキクハガレセンチュウなどの被害も深刻。
・種類は非常に多く、春3月ごろから秋まで発生を繰り返す。害センチュウを食べる有益なセンチュウも数多くいる。
・土壌中に生息するセンチュウの退治は土壌消毒で行うのが一般的だが、生育中の植物にも影響を与えるので家庭の庭では難しい。 ネマトーダを殺す特殊な成分を分泌することで知られているマリーゴールド(特にフレンチマリーゴールド)を植えるか、枯れた株を土にすき込んだり、 完熟たい肥や腐葉土、ピートモスなどの有機質を混ぜておくのも、土中の環境を改善するので効果が期待できる。 また、同じ種の植物を連作すると、特定のセンチュウが繁殖して被害を受けやすくなるので避ける。
○テントウムシダマシ
「テントウムシダマシ」という名前がつけられているように、幼虫、成虫とも姿形はテントウムシとそっくりだが、草食のテントウムシで、ナス科やウリ科の植物に好んで寄生して葉を裏側から食い荒らす。 アブラムシなどを食べて退治してくれる益虫のテントウムシは星の数が少なく、葉を食害するテントウムシグマシには褐色の甲羅に黒い星が28個あり、毛が多いため、艶がない。その星の数から「ニジュウヤホシテントウムシ」とも呼ばれて いる。
・春から秋まで発生を繰り返しますが、真夏は一時的に少なくなる。
・スミチオンなどを散布して駆除する。アプラムシの天敵となる普通のテントウムシを間違って殺さないように注意。
○ナメクジ
・鉢の下や草木のじめじめした薄暗いところに隠れて生活しており、夜間になると這い出してきて、新芽、やわらかい葉、花弁、イチゴなどの果実などを 食い荒らす。移動した跡には光沢のある白っぽい足跡が付着しているので、すぐにナメタジの被害とわかる。
・湿度の高くなるは4~5月から梅雨期にかけてと、9~10月に多発するが、鉢の下や温室などでは年間を通じて発生する。
・専用の殺ナメクジ剤を使って早期に駆除する。塩をかけて干からびさせたり、夜間に好きなビールを缶に入れておびき寄せ、おぼれさす方法もある。 また、ナメクジが嫌う鋼線、消石灰、輪ゴムなどを鉢などのまわりに巻きつけたり置いたりしても、効果が期待できる。
○ネダニ
・ダニの仲間で、体長は1mm以下で非常に小さく、成虫の体色はツヤのある乳白色をしている。成虫、幼虫がチューリップ、スイセンなど球根草花などの土に埋もれた茎部と根部に多数群がって寄生して養分を横取りする。根が加害されると地上部の生育が悪くなり、簡単に引き抜ける。 また、茎部が加害されると葉が黄化し、ひどくなると枯死する。引き抜いてみると、球根の鱗片や根が腐って細根がなくなっており、この虫が見つかる。球根では貯蔵中にもネダニが寄生して被害が進行する。
・1年中発生を繰り返し、高温ほど被害が多くなる。
・オルトランなどを散布して被害をくい止める。そのときにベノミル剤などの殺菌剤を併用すると、より効果的。アルカリ質の消石灰などを薄くまいておいても多少は効果が期待できる。
発生した場合は、連作せず、当分の間その場所で同じ種類の植物を育てないようにする。また、貯蔵中の球根にネダニが見つかったときは、伝染を防ぐためにも、必ずすぐに除去すえる。
○ハダニ
・小さな赤いダニが草花、庭木、果樹、洋ランなどの葉裏に多数群がり、養分を吸い取る。そのため、被害を受けた葉は、白くカスリ状になったり、変形したりして成長が悪くなる。
・雨や湿気に弱いが、春から秋にかけての高温・乾燥期に多発する。
・葉が点々と白っぽくなったらハダニが発生している可能性が高いので葉裏を確認する。初期なら、直接ホースで葉全体に強い水を吹きつければ抑えることができる場合がある。広まってしまったり水をかけられない場合は、 専用の殺ダニ剤での早期に駆除する。同じ薬を使い続けると効かなくなることがあるので、別の薬に替えた方が良い。乾燥を防ぐ工夫をすることも必要。
○ハバチ
・蜂の仲間のハバチの幼虫が草花、野菜、庭木、果樹、鉢花など多くの植物の葉を食い荒らしたり、不規則な穴を空ける。蜂の幼虫といっても、毛はないがチョウのアオムシのようにイモムシ形のものが多。蜂の尻にある針は刺す針でなくノコギリ状の産卵管で、葉や茎の表皮を浅く切り裂いて2~30個の卵を一塊にして産み付ける。ふ化した幼虫はそこから這い出して周囲の葉に取り付き、集団で葉を食害する。
・原始的な蜂で種類が多く、植物への依存性があるため、形態、習性、発生する植物もまちまちだが、気温の高い夏から秋にかけて活動を盛んにするものが多い。
・お腹の黄色いチユウレンジハバチはバラの茎に縦に産卵するため、縦に亀裂が残り、そこから幼虫が出てきて周囲の葉を食害する。肩の所が黄橙色のアブラナ科の植物が好物のカブラハバチの幼虫は毛のない黒色のイモムシで、手で触るとすぐに落下する習性がある。ツツジ類の葉が好物のルリチュウレンジは全身が暗い青藍色をしており、幼虫は頭部が黄橙で薄緑色の体に黒い斑点がある。雌の成虫は産卵管を葉の縁に差し込み、葉肉内に1粒づつ産卵するので、葉の縁がゴマ粒大に膨れる。
・薬剤に弱く、ほとんどの殺虫剤で簡単に駆除できる。数が少なく小さなうちに駆除する。
○ハマキムシ
・夜行性の体長1cmほどの小さなハマキガの幼虫で、体長2~4cmほどの幼虫が糸を出して葉を袋状に巻いたり、数枚重ねてとじ合わせてそのなかで生活し、草花、野菜、庭木、果樹、鉢花など多くの植物の葉や新芽、蕾などを食害する。果肉内に入り込んだり、茎や根に穴をあける種類もいる。
・多くの種類がおり、葉の表面に卵の塊をウロコ状に200粒ほど産み付ける。卵の表面は透明な薄い膜でおおわれており、約2週間で孵化する。約30日でサナギになり、早春から晩秋までの間に成虫、幼虫が4~5回だらだらと発生を繰り返す。冬は幼虫の状態で巻いた葉の中で越冬する。温度が高いと冬期でも活動する。
ハマキムシの卵は葉の表面に産み付けられるので、よく注意してみれば見つけやすい。産卵されていたら葉ごと摘み取り処分する。 葉が巻いていたり通常とは異なる形態にあったら、中にハマキムシ幼虫がいる可能性がある。葉を開いて幼虫を捕殺するか、見た目もよくないので葉こど摘み取り処分する。やむを得ない時は、発生期間中、特に中にいる虫によくかかるようにスミチオン乳剤などの殺虫剤を定期的に散布して被害をくい止める。
○ハムシ
・成虫は7㎜前後の四角っぽい甲虫で、成虫は草花、野菜、庭木、果樹、鉢花など多くの植物の葉を食害し、葉に穴をあけたり、ひどいときは葉を食い尽くす。花の場合は、花弁の先が食べられて無くなったしまう。
・幼虫は土のなかにすんでいるので、葉だけでなく根や茎までかじるため、生育が極端に悪くなったり、ダイコンやカブでは根に傷や穴ができたりする。
・種類が多く、植物への依存性があるため、形態、習性、発生する植物もまちまちだが、成虫で越冬し、6月ごろから夏にかけて幼虫が活動するものが多い。ダイコンサルハムシのように秋に幼虫の被害が多くなる種類もいる。
・黄橙色のウリハムシはウリ科のカボチャやキュウリなどに、黒色のヨモギハムシは菊などに、ダイコンハムシはアプラナ科のダイコンやキャベツに被害を与える。
・成虫は見つけ次第補殺する。幼虫は薬剤が効きにくいので、成虫の期間にオルトランなどの殺虫剤を虫に直接かかるように散布して駆除する。
○ハモクリガ・ハモクリバエ
・成長するとガになるハモグリガもハエになるハモグリバエも、幼虫時代はともに体長5㎜ほどの小さなウジムシで、この幼虫 が草花、野菜、庭木、果樹、鉢花など多くの植物の葉の内部にもぐり込んで葉肉部分を食害する。被害葉には絵や字を描いたような模様が現れるため、幼虫は「エカキムシ」とも呼ばれている。被害がひどい場合は、葉肉が全部食い尽くされて真っ白になり、葉が枯れてしまう。
・春から秋にかけて数回発生を繰り返えす。
・発生初期に殺虫剤を散布して駆除する。浸透性のあるオルトラン、アセフェート剤などなら、葉のなかにもぐり込んでしまった虫にも有効だが、収穫直前の野菜などへの散布は避ける。
○マメシンクイガ
・土中で越冬した幼虫が日長変化によって羽化し、8月~9月頃にかけて出現する。成虫はマメ科作物の幼莢に産卵し、孵化した幼虫は莢内に侵入 して内部を食害 、2~3週間で5齢を経て莢外に脱出し土中で営繭し蛹化・越冬する。成虫の発生は1回で、日没前に葉上で群飛、交尾して産卵
する。
・幼虫の体長は1cm前後で、幼齢期の体色は乳白色。老熟すると紅色を帯びた体色となる。
・全国に分布するが、特に寒冷地や多湿地での発生が多い。また、夏季が冷涼な年に発生が多いと言われる。
茎や莢に繊毛の多い品種に好んで産卵する傾向がある。
・防除は、連作を回避し幼虫密度が高まるのを防ぐ。開花後10~30日の子実肥大期に有効な薬剤で防除。
*高橋さんち
鞘に小さな穴が開いていて、中の豆が食べられてほとんど収穫できなかったので、ネットで調べたらマメシンクイガの被害と分かりました。
これまで何年か栽培してカメムシには注意していたが、迂闊でした。
マメシンクイガが産卵する時期をずらして栽培すると良いとアドバイスを受けたので、ネットやマラソン乳剤などの薬剤散布と組み合わせて防除を徹底したいと思います。
○ミノムシ
・ミノガの幼虫で、枯れ葉や小枝でつくられたミノをまとい、樹木類の葉から茎、幹に至るまで食い荒らし、かなり大きな庭木も枯らしてしまうことがある。
・春に親ミノから孵化した幼虫はただちに小さいミノを造って食害をはじめ、脱皮を繰り返しながら小枝や葉片をつけて大きなり、終令幼虫に達する秋にミノを枝などに結わえ付けて越冬する。
・ミノをかぶっているので、虫に直接薬剤をかけるのは困難なため、面倒がらずに捕殺するのが一番早い。
○モンクロシャチホコ
・羽に黒い模様のある白いガの幼虫が集団で、手当たりしだいに葉を食い荒らす。ケムシの体色は最初は赤褐色で,老熟すると黒色になり黄白色の長毛が生じて5cmくらいの体長になる。 驚くと頭部と尾端をもち上げて鯱や船底の形のような弧を描いて反りるので、その様子から、「シャチホコ」「フナガタケムシ」などとも呼ばれている。
・年に1回の発生で、7月ごろに成虫が葉裏に30粒くらいの卵をかたまりで産卵、これがふ化して、暑い盛りに幼虫が活動し、9月になると幼虫が大きくなって活発に葉を食べるので食害が目立つようになる。 10月になると地上に下りて浅い土中にもぐり、繭を作って蛹で越冬する。
・集団で群がっているのを見つけたときは、枝ごと除去して踏み潰す。幼虫がまだ小さく広がらないうちに、スミチオンなどを直接害虫に向けて散布する。
○モンシロチョウ(アオムシ・ナノアオムシ
・モンシロチョウやキチョウの「アオムシ」と呼ばれる幼虫が、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、ハボタンなどアプラナ科の野菜やサクラソウなどの草花の柔らかい葉を食害し、ひどいときは葉脈だけになってしまうこともある。
春3月ごろから秋遅くまで発生を繰り返すが、5月に最も発生する。真夏には一時減り、秋に再び増えてくる。
・ナノハナのまわりをチョウが舞う田園風景は春の風物詩でもあるが、チョウが飛来して卵を産みつける前に、日の細かいネットなどをかけて産卵を防止する。幼虫は捕殺してもよいが、葉と同じような色をしているので見つけにくいので良く観察する。 殺虫剤で幼虫を駆除する場合は、マラソンやオルトランなどを使う。スミチオンのようなMEP剤をアブラナ科の植物に散布すると薬害が出やすくなる。
○ヨトウムシ
・成虫の体長が2cm程度のヨトウガなどの幼虫で、庭木、花木、果樹から菜園の野菜、花壇の草花、温室植物、鉢花とほとんどすべての葉を食害し、激しい場合は葉脈だけ残して食べ尽くされる。
・卵は葉裏にまとめて産み付けられ、卵塊からふ化直後は日中でも活動し、群棲して表皮を残して葉肉部を食害するので、食害部分は透けてる。大きくなるにしたがって分散し、昼間は茂みや地中に浅く潜み、夜間活動するので、食害された部分には昼間は姿が見えない。成虫のガも、活動するのは夜間だけ。蛹の状態になって土中で越冬する。
・多くの種類がおり、たとえば、ヨトウガの場合は、4~5月と7~8月の年2回の発生、ハスモンヨトウは7~10月くらいの間に5~6回発生を繰り返す。
・幼虫がまだ小さいうちはオルトランなどの殺虫剤を散布して駆除する。大きくなると殺虫剤の効果が現れにくくなる。被害があっても害虫が見つからない場合は、根元や周辺の土を掘ってみると、ヨトウムシの幼虫が見つかることが多いので、直接補殺する。デナボン粒剤などで誘殺してもよい。葉裏に産みつけた卵塊を見つけたときは、つぶしておく。
○ネキリムシ
・カブラヤガなどのヤガの幼虫で、ほとんどすべての草花、鉢花、野菜の根の上の若い茎から上を食害し、茎葉が無くなるので成長できなくなる。卵は一個ずつ葉に産み付けられ、孵化して小さいうちは葉や茎をかじる程度だが、脱皮して齢が進み、2~3㎝ぐらいに大きくなると昼間は土中に隠れ、夜間に苗や株を地際からかみ切って茎や葉など地上部の一部を地中に引きずり込みんで食べる。一見すると根を切られたように見えるためネキリムシ(根切虫)と呼ばれている。異常発生した場合は日中でも食害するようになる。
・ヤガの種類は多く、4月のはじめから11月くらいまで発生する。幼虫の状態で土の中で越冬し、暖かい地方では早春から活動し年3~4回発生する。
・茎から上が無くなった被害株周辺の土中に隠れている幼虫を探し、捕殺する。掘り出すとくるりと曲がり動かないでいる。体はゴムのように弾力があるのでつぶすよりハサミで切った方が良い。小さいうちはオルトランなどの殺虫剤を散布して駆除し、地中の虫はデナボン粒剤などで誘殺する。
○ゾウムシ、チョッキリ
・ゾウムシは体長数㎜程度の甲虫で、体は丸っこくて硬く、口先が長く伸びた種類も多いため「象虫」と呼ばれる。チョッキリも体長数㎜程度の甲虫で、葉や茎を切って落とすことからつけられた名前だが、一部には切らないチョッキリもいる。動きが遅いが、頑丈な外骨格で身を守る。敵に出会うと偽死(死んだふり)をするものが多い。
それぞれ独立した科に属するが、幼虫・成虫とも草花、野菜、庭木、果樹、鉢花など多くの植物の葉や髄、花、樹液、果実、朽木、種子などに加害する。成虫が植物組織に口吻(コウフン)で穿孔した孔に卵を産みつけ、孵化した幼虫が、そのまま穿孔生活に移るが、口吻が退化したグループは小さな卵を多量に土壌中に産み落とし、幼虫は自由生活をする。
・多くの種類がおり、植物への依存性があるため、形態、習性、発生する植物もまちまちだが、成虫で越冬し、6月ごろから夏にかけて幼虫が活動するものが多い。
・ヤサイゾウムシは、ほかの多くの昆虫が冬ごもりをしている冬に活動する害虫で、10月頃に成虫が地中から這いだして、冬に栽培されている草花や野菜に産卵し、孵化した幼虫が新葉などを食害する。クロケシツブチョッキリは体長2~3mmほどの小型のチョッキリで、4月中~下旬から成虫が出現して、バラの蕾の付け根に孔をあけて卵を産むため、それから先がしからびて枯れる。 モモチョッキリは、少し大きくなったモモ、ウメなどの果実に産卵し、枝を切断したり柄の所が折られて樹にぶら下がり、後に落果する。